スピーカー工作記

驚異の重低音に挑戦!

12cmフルレンジ一発 ダブルバスレフで、クラシック用スピーカーを目指せ


1、はじめに
 コラムにも少し書いたが、私が使っているスピーカーは約20年ほど前に自作した長岡鉄男氏設計の口径20cmフルレンジ片側2発使用のバックロードホーン(ダイナロード7)である。このスピーカーボックスはかなり大きく、両親の住んでいる実家の仏壇の部屋においてある。いちいちクラシックを聴くのに70mほど離れている実家に行くのもおっくうなので、このごろはヘッドフォンで聴くことが多くなってしまった。お盆に完成した後面開放型のバックロードホーン(これまた長岡鉄男氏設計)は、居間のテレビの側に居座ってしまったし、私の部屋に置くにはやはり大きすぎる。

 そこで私の6畳の部屋に合うようなやや小型の、クラシック鑑賞用スピーカーを作りたいという願望が日に日に増してきた。できるだけ低音が出て、安く作りたい。それに、今度は、長岡鉄男氏設計のではなく、彼の設計を参考に私オリジナルの設計でスピーカーを作るつもりだ。

 なぜ、ここまで自作にこだわるかと言うと、半信半疑で作った上述のダイナロード7がすごく良い音を出したからだ。こんな素人の私が作ってもこれほど良い音が出るなんて信じられなかった。長岡鉄男氏の立派な設計、fostex社の優秀なスピーカーユニット(とは言っても1ユニット6000円ほど)がものをいっているのは確かだが、その時の嬉しさが忘れられない。高い金出して市販のスピーカーなど買うものではないと思ってしまった。組み立ての楽しみ、色を塗る楽しみ、音が出た時の喜び、それからいろいろツィータを選ぶ楽しみ、作った後の愛着。
当時、友人にダイナロード7の音を聴かせたところ、音をえらく気に入ってしまい、結果として彼をスピーカー自作への道に引きずり込んでしまった覚えがある。

てなわけであるが、さあどうなることやら。





2、資料の収集

高さは5,60cmぐらいの、小型フロアタイプを目指すことにした。
資料の収集に取り掛かった。はじめはインターネットの検索で調べたが、オーディオスピーカー自作に関するものはほとんどなかった。fostex社のHPはなさそうだし、テクニクスのHPにもめぼしいものがなかった。


しょうがないので今から17年ほど前の私が参考にしていたスピーカー工作の本を物置から探すことにした。5年前に見たことがあるので、少し苦労したが以下の2冊がやっと見つかった。

「週間FM別冊長岡鉄男オリジナルスピーカー工作45」「オーディオアクセサリ1980年夏季号」この2冊は、17,8年近く前、スピーカー工作に凝っていた時によく参考にしていた本だ。

 約17年前の週間FMの別冊。

 私の作った、ダイナロード7、や後面開放型バックロードホーンの設計図も載っている。スピーカーボックスの設計図は、20年後の今になっても色褪せない内容だ。現在でも立派に通用する。

 個性溢れるスピーカーボックスを次々設計する長岡鉄男氏には敬服してしまう。現在も第一線で活躍中


2冊のページをパラパラめくると懐かしいこと懐かしいこと。まだ、CD、MD、DATなどない頃だ。さてそんな中、私の目に留まったのは、

奇蹟の超低音再生システムに挑む

小型ローコスト超ワイドレンジスピーカー2機種への挑戦

と銘打った記事であった。両方とも長岡鉄男氏設計のダブルバスレフの記事であった。試聴の記事がすごい。

10cmフルレンジ一本で100から50Hzを中域と同程度のレベルで再生されている。
とか、
16cm一本でスーパーウーファーがはだしで逃げて行く驚異の重低音。
とか。

もう、これしかないと思った。

3、ダブルバスレフとは

 一般のスピーカーボックスは密閉型か、バスレフ型が大部分だ。簡単に言ってバスレフ型というのは、スピーカーボックスにダクトを設けて低音を増強させようとする方法だ。ダブルバスレフは、一つのスピーカーボックスの中を2部屋に分けて、あたかも、バスレフ型のボックスにもう一つバスレフのボックスをくっつけたような設計にして、各々のバスレフのダクトを違った周波数の増強に使ってワイドレンジに低音を増強させようとする欲張りな方法だ


4、スピーカーユニットの選択

 さて、この2冊の記事を読むと、10cmフルレンジのものは、ボックスが小型だが、あまりパワーが入らないとのこと。FOSTEXのカタログを見ても、口径10cmのスピーカーは大体、耐入力が15wほどである。これでは少し物足らない感じだ。 16cmのユニットを使ったものは、かなりの迫力の重低音が出るとのことだが、ボックス自体やや大柄になり、後でツィータを追加して2ウェイにしなければならない。

  そこでその中間を取って12、3cmあたりはどうだろうか。カタログを見ると、FOSTEXでは、3種類ほど口径12cmのフルレンジスピーカーが発売されている。耐入力も50w前後であり、これならば、6畳ぐらいの部屋ならパワー不足にならないだろう。ツィータも必要ないだろうし、これ一発で行けそうだ。


 スピーカーユニットの選択は、FOSTEXのFF125Kに決定した。ルックスも良いし、耐入力50wで、マグネットが口径の割に非常に強力でφ10cmもある。値段も秋葉でなら3500円ぐらいだろう。FE127はルックスがいまいち、FX120はFF125Kの倍の値段がするし、能率がやや低めで、コーンのおもさMoも5.3gと重いのもやや気になる。FX120はシングルバスレフでも充分かもしれない。ウーファー寄りのフルレンジだ。





5、スピーカーボックスの設計
 
さて、自作と言っても、12cmのダブルバスレフの記事はないし、しょうがないので、10,16cmの各、ダブルバスレフの記事をたたき台にして、自分で設計してみることにした。

a)内容量の決定
 はじめにスピーカーボックスの内容積を見ると、長岡鉄男氏のダブルバスレフの場合10cmのものが28リットル(以下L)、16cmのものが77Lぐらいだ。すると口径が12cmだと、大体40Lぐらいかな。(スピーカーの口径の面積に比例すると考えた。こんな理論的根拠はどこにもないよ。私の理論だ。)
 
  そこで、またぺらぺらと上述の2冊の雑誌をめくっているとありましたありました。厚さ21mmのサブロク(横3尺縦6尺つまり一畳、約90cm*180cmの大きさでDIYショップに売っているもの)ラワン合板でやや縦長の内容積37Lほどの板取の設計図が。 よし、これにしよう。最終的には37L前後の内容量に決定

b)容量の分割の割合
 さて、今度は、内容積を2つに分割するわけだがどのくらいの割合で分割すれば良いのかわからない。これまた、10,16cm用のバスレフの記事を参考にして大体決めてみる。FF12Kのメーカー奨励ボックスの内容量はだいたい8L前後だから、きりの良いところで上から20cmあたりで分割してみるか。すると、上部の内容量は12Lほどになる。 16cm口径用のダブルバスレフも、大体全高の1/3から1/4ぐらいで分割しているみたいだ。20cmよりもうすこし上で分割しても良いかもしれない。ここいら辺は長年の感によるものであるのか。よくわからない。理論的なことは深く考えないことにする。今回は最終的に上から20cmとする。(結構いいかげんだ。)

c)ダクトの設計
 次にダクトの面積をどのくらいにするかだ。口径10cmの場合、5*5cm、16cmで10*10cm、あるいは、8*8cmになっている。では、大体6*6cmあたりが妥当かな。

最後にダクトの長さの決定だ。つまり、各ダクトの共振周波数をどのくらいにするかだ。おおよそ、上のダクトで100Hz前後、下のダクトで50Hz前後になるようにすれば良いだろう。(長岡鉄男氏の10cm用のダブルバスレフでは、110と60Hzぐらいに設定してあった。)

長岡鉄男氏のダクトの共振周波数を求める計算式は以下のようになっている。

Fd(ダクトの共振周波数 Hz)
L1,L2(ダクトの幅と高さ cm)
L3(ダクトの長さ cm)
Vc(実行内容量 リットル)
r(L1×L2を円に換算した
時の半径 cm)

 長岡鉄男氏の計算式によると上のダクトの共振周波数fd1を100Hz、内容積12.4L、r=3.4cmとすると、ダクトの長さL=約4cmぐらいに出た。下のダクトの共振周波数fd2を50Hz、内容量は全体の容量だから、約37L、一辺が6cmの正方形を同じ面積の円に換算した場合の半径は3.4cmとしr=3.4cm、するとダクトの長さは約6cmと出た。(ぴったりにはでない。概算でかまわないと思う。)

d)最終設計図

追加の板取
仕切り板は大体225mm×298mmぐらいになる。a)のところの図の
天井と底板と現物あわせで切っていく。穴あけは後ろから50mmの
ところからひし形に一辺が60mmの正方形になるよう。

上のダクトは40mmなので板の厚さを差し引いて25mmとし、
一辺が65mmの正方形になるように板取する。誤差を考えて
ダクトの穴あけより、5mm大きくなるように作るのである。
つまり25×80mmの板を8枚取る。

下のダクトは長さ60mmだから板の厚さ(約20mm)を引いて
40mmにする。これも一辺が65mmのものを作るので、
40×80mmの板を8枚きり出す。


上図が完成予想図。スピーカの穴あけは上から100mmのところに中心が
来るようにして、FF125Kの取り付け直径104mmに開ける。

厚さ15mmの仕切り板は上から200mmのところにつける。
下のダクトはしたから50mmのところに開ける。




6、材料の収集
a) スピーカーユニット fostex FF125K×2
b) ラワン合板 21mm厚サブロク1枚、15mm厚 450mm×900mm1枚
c) くぎ35mm適量
d) 木工用ボンド。かなり多めに用意
e) 吸音用グラスウール
f) スピーカーコード
g) コードターミナル(私は直接コードを背面から取り出し、アンプに直結したので使っていない。)
h) ターミナル取り付け用木ネジ
i) FF125K用スピーカーネット(本来こんなもの要らないが、子供にいたずらされると困るので)
j) ウッドパテ(くぎ穴を埋めるためのパテ)
k) 砥粉(今回入手できなくて使わなかった。あったほうが仕上げがきれいにできる。)
l) ペンキまたはニス(水性のもののほうが扱いやすく臭いが少ない。)
m) エポキシ系コーキング材

7、道具を揃える

a) トンカチ(やや重たいもの)
b) のこぎり(普通の両刃鋸と曲線引きの細い鋸)
c) かんな
d) くぎの頭を打ち込むもの(名前忘れた。)
e) 木工用やすり(曲と直)
f) 定規
g) コンパス
h) 鉛筆
i) カッターナイフ
j) きり
k) ドリル(木工穴あけ用)
l) ねじ回し
m) 半田および半田ごて
n) サンドペーパー(あれば電動サンダー)
o) 刷毛(ペンキ用と砥粉用)
p) 革すき
q) ぬれ雑きん
r) 軍手
s) ラジオペンチなど

8、工作

a)合板の切り出

厚さ21mmのほうは、DIYショップで切ってもらった。電気鋸を持っていれば良いのだが、たまにしか使わないし、商売柄指を大切にしたいので使わなかった。15mm厚の方は現物あわせで21mmの天井、底板にあわせて鋸で切った。ダクトの部分も手動鋸で切った。

b)穴あけ
 前面に来る板にスピーカー取り付け穴とダクトを開ける。はじめ、あらかじめ開けるところをカッターナイフでなぞり、合板の表面の板を切っておく。これを行わないと、切断面のところから表面の板がはげてきて汚くなる。

 次に15mm厚の仕切りの板の部分に上部のダクトの穴を開ける。開け方は、はじめドリルで小さな穴を開け、そこから、曲線引きの鋸を入れて切る。電動糸鋸があれば簡単だが。私は持っていない。

 最後に背面のスピーカーターミナルのところに穴を開ける。今回は、ドリルの直径とスピーカーコードの直径がほぼ一致したのでそのままドリルで開けた。ターミナルを使う場合は、慎重に、彫刻刃あたりで開けたほうが空気漏れが少ない。

c)組み立て 
 


 基本的には、多量の木工用ボンドと釘だけで作る。長岡鉄男氏の作成方法もこのようにしているようだ。木工の専門家でもあれば、木ネジ等で、あるいは、ボンドのみで作れるかもしれないが、ずぶの素人は誤差が出るのはあたりまえと考え、かえってアバウトのほうがあっちこっちで修正が効くからだ。接合面に、はみ出すように多量の木工用ボンドをつけて、釘で叩き込んでいく。はみ出したボンドは濡れ雑きんで拭いていく。そうすると表面がきれいになる。固まってからボンドを取るのは大変だ。

 はじめにダクトの部分を作る。次にダクトを前面版と仕切り板につける。
ここまできたら、ダクトが取れないように、ボンドの少し固まるのを待つ。

 そうしたら、今度は、天井、底板、仕切り板、前面後面版をつけ、側面版も張り付け、一休み(スピーカーのターミナルをつける場合には、この段階までに付けておき、スピーカーコードをつけておく。)。

 吸音材を、天井、底。仕切り板(ダクトをふさがぬよう)、前面、後面版、側面板の片方に貼り付ける(釘、接着剤等で)。


最後にもう片方の側面版をつけて、
完成。ボンドが数時間後に固まったら、
釘の頭を合板の表面から1mmぐらい
沈むよう打ちこんでおく。



d) 仕上げ
 仕上げにはいろいろな方法があるが、今回私は、水性ペンキで塗る方法を行った。

 はじめに、貼りあわせで、板同士のずれが出て、出っ張ってしまったところは、かんなで形態修正(完璧にうまく行っていれば必要ないが、わたしのテクではあっちこっちにずれが出てしまい恥ずかしいくらい)。

 次に、木工用パテで、釘穴や、表面のでこぼこを埋めていく。パテが乾いたら、革すきではみ出した部分を削り取っていく。

 砥粉を、どろどろに水に溶かし、合板の表面になすりこむように布でこすっていく(今回はこれは行わなかったが、砥の粉を塗ると表面つるつるになって気持ちが良い。)。

 砥の粉がかわいたら、紙やすりを荒いものから細かいものへとかけていく(2段階ぐらいで良いかも)。
この時電動サンダーがあると楽だ。手でやるとかなりしんどい。ここは根気がかなり要る。角の部分も丸めていく。

 さて最後に、自分の好きな色にペンキを塗る。今回は、つや消しの、茶色の水性ペンキを使った。
1度塗りでは、だめだ。少なくとも、2度以上重ね塗りをしたほうが、きれいになる。今回は、3度重ね塗りした(水性ペンキの場合、少し水で薄めて何回も塗ったほうが良いかもしれない。)。やっと格好がついてきた。さあて、肝心の音はどうか。胸がわくわく、うまく低音が出るかな。心配だ。格好良くても、低音が出なくちゃ。

e)スピーカーの取り付け

 

やっとボックスは完成した。
はやる心を押さえつつ、FF125Kに
スピーカーコードをはんだ付け。は
んだ付けの前に、そうそう、パッキ
ングのスポンジを通しておかないと
いけないな。プラスマイナスも確認
してと。

 グリルを付けて、木ネジで隙間が
できないようしっかり固定。木ネジ
をねじ込む前に、少し、きりでもんで
おいたほうがやり易い。最後にボッ
クス後面のコードの出口は空気が
漏れないようエポキシ系の接着剤
でふさいでおく。

9、試聴

 プリメインアンプはケンウッドのKA-5010という、約、10年前に買った、当時5万そこそこのアンプである。CDプレーヤーも約10年前出はじめの頃の、マランツのCD-34。やや古めかしくなったシステムである。それに、280円/mのスピーカーコードをダイレクトにアンプにつないでいる。アンプはソースダイレクトで、プリアンプ部をジャンプして使っている。部屋は床が板張りのややライブ気味の6畳の部屋である。

 さて、はじめだから、ヴァントのブル8でも聴いてみよう。音は一応出たが、なぜか、紙臭い、音が団子で広がりがない。低音も思ったより出ていない。繊細さも欠いている。やたらきつい音だ。がちょーん。やっぱり自分の設計ではだめかとはんばあきらめてしまった。


 しかし待てよ、3楽章あたりから、音が少し柔らかくなってきた。奥行きも出てきた、低音も少し出てきたぞ。おっ、これはいけるぞ。長岡氏の言っている、エイジングで音が良くなってきたのだな。アンプ、CDプレーヤーも、暖まってきたのだろう。これは、ランニングだ。やはり、最初は、スピーカーのダンパや、コーンが硬いのだろう。本当に、たかが30分そこそこでこんなに音が違うなんてびっくりした。エイジングはばかにならない。その日は、3時間ぐらい鳴らしたが、ドンドン聴くほどに良くなってきた。コントラバスの音もグーンと聞こえるようになってきた。

 こんな調子で約1週間ほど使ってみた感想。

1)重低音再生はかなり満足する結果を得た。
 クラシックで、低音をつかさどるコントラバスの低い音までしっかり聞こえる。どっしりとしている。しかし、バックロードホーンの音のように、叩き付けるような低音ではなく、ソフトでウォームな低音だ。これはクラシックには好都合だ。ダクトに耳を近づけると低音が出ているのが良く聞こえる。試しに、ダクトを塞いで、密閉箱として試聴したところ、低音の量感がぜんぜん違った。ダクトを塞ぐと中音もきつくなる。

2、)中高音からは、明るいめりはりの利いた音を出す。
 口径が、12cmゆえ、中高音はお手の物で、不足は感じない。ややハイ上がりの感がある。ただ、ドラムのハイハットの繊細な、シャリシャリ音は出来の良いホーンツイータには及ばない。これはしかたがない。立派なものだ。

3、)バスドラ、ティンパニーの音は、いまいち迫力に欠ける。
 このスピーカーだけを聴いていればなんでもないが、後面開放型バックロードホーンや、ダイナロード7と聞き比べると、ロック系の迫力は、今一つ。おそらく、重低音ではなく、ややその上の低音があまり出ていないのだろう。しかし、コントラバスの雄大さは、バックロードホーンをしのぐ。口径12cmで、20cmのバックロードホーンよりコントラバスが雄大に鳴っているのであるから、たいしたものだ。

4、)低音域まで、きっちり録音できている、CDとそうでないCDとでは、スケール感がかなり違って聞こえる。
 ロック系で、あまり低音が入っていないCD再生には向かない。迫力が今一つないのである。これは最近のロックの録音に多い。ロック系でも、ピンクフロイドの「狂気」のように、心臓の鼓動や、、重低音のシンセの音がばんばん入っているものは、かえって恐ろしさ怪しさを増すので、効果絶大。改めて聴き直した「狂気」、バックロードホーンで聴いていた時とぜんぜん違って聞こえた。こんないに重低音が入っていたとは今まで知らなかった。

 クラシック系では、意外に低音が入っていないのが、マタチッチのブル7、シューリヒトのブラームス4番。意外に迫力があるのは、バレンボイムのモーツァルトピアノ協奏曲(旧録音)の一連の録音。あの、20番k.466などは、コントラバスが、びんびん鳴って、恐ろしいくらいにせっぱ詰まった迫力が出てくる。概して、デジタル録音は、低音はかなり入っているようだ。手持ちでは、ドイツシャルプラッテン系レーベルのCDが優秀。 

5、)オールマイティとはいかないが、クラシック用としては大成功と言って良い。
12cmシングルコーンでこれだけ雄大な音が出れば大成功だ!

10、反省およびバリエーション

1)上部の容積をもう少し減らし、上のダクトを長くしたほうがロック系も迫力が出たかもしれない。
 FF125Kのメーカー奨励ボックスの容積が8Lで、Q0が0.25と低いので、上部の容積はもう少し減らしたほうが、バスドラ、テンパニーあたりの低音がもう少し出たのではなかろうか。

2)スピーカーユニットをFX120に変えてみる。
FF125Kの倍の値段になってしまうが、FX120のほうがかえってバランスが良いかもしれない。奨励容積が10Lと、今回の設計の上部容積と一致している。FX120が、ややウーファー気味なので100HZ以上の低音はユニット自体が上手く出してくれて、50HZ付近は、下のダクトをドライブして出るようにすれば、オールマイティーになったかもしれない。しかし、高音の伸びは、FF125Kに負けるだろう。

3)スピーカーユニットをFE127に変えてみる。
コーンが軽く、やや、マグネットが160gと非力(FF125Kは430g)。ダクトを充分にドライブできるか不安がある。



11、終わりに

 今まで、バックロードホーンの音しかじっくり聴いたことなかったので、ダブルバスレフのソフトで雄大な低音には感動した。スピーカーの違いで、曲のイメージも変わってくることがわかった。
 16cmのダブルバスレフも作ってみたくなったが、置く場所もないので、またの機会にしようと思う。

 最近のオーディ事情は、さびしい感がある。PCブームに押されているのはしょうがない。
若者は、ヘッドフォーンステレオに慣れ親しみ、家で聴くのはミニコンポ、最近のロックポップスはドンシャリが多く(このジャンルでは致し方ない面もある。)、ピンクフロイドの「狂気」のような低音がバンバン入っている録音は意味がないのかもしれない。

 現在、PC自作が盛んなように、20年前はけっこうスピーカーの自作も盛んだった。今では、スピーカーの自作は、一部のごくマニアがやるようになってしまった。20年後には、PC自作もごくマニア向けになるかもしれない。



12、スピーカー自作お勧めリンク


「やすひろのホームページ」 山形大学工学部 高橋康宏さんのHP。オーディオ関係を中心にスピーカー自作も掲載。長岡鉄男氏の情報も豊富。長岡教なる得体の知れない宗教団体(とは違う?)を主管する、長岡鉄男信者。私も、入信しました。最近ダブルバスレフの実験を行い詳細な解析を行っている。
「小俣光之ホームページ」 プログラミングの仕事をしていらっしゃる小俣さんのHP。スピーカー自作、真空管アンプの自作のページあり。真空管アンプに興味のある方、有益なリンク集あり。