オーストラリアで貿易のお手伝いをして感じる事


20066月に開設したオーストラリアでの貿易サポートをPRするホームページの効果もあって仕事の量が増えてきました。多くは輸出入の実務や英語のコミュニケーションに不慣れな日本の中小企業のサポートが殆どです。貿易相手国はオーストラリアのほか、ニュージーランド、米国、スペイン、イタリア、台湾など様々です。幸い、殆どがメールや電話で済む仕事ですので、メルボルンに在住している事の不便は余り感じません。

オーストラリア人の品質に対する考え方

貿易のお手伝いをしていて日ごろ良く感じる事に日本と他の国の品質に対する考え方の違いがあります。工場から出荷される製品の不良品の比率は、日本の製品と比べると非常に高いようです。これは消費者や流通に携わる人達の求める品質水準が日本程は高くない事にも原因があります。日本では通用しないような品質の商品でもこちらの消費者はそれが当たり前と受け入れている事がままあります。瑕疵のある商品が売られている事も多くその場合はレシートと一緒に販売店に持っていくとすぐに返品に応じてくれます。日本の様に販売店で「使い方は正しかったか」とか「包装が破れているから返品に応じられない」とか言われる事は有りません。こちらではあたかも検品は工場出荷前にやるのではなくて消費者にやってもらうと勘違いしているのではないかと思われるくらいです。冷蔵庫を買ったときに中にあるべき冷凍皿などが無く販売店に連絡したところすぐに届けてくれた、とか、食卓テーブルセットを購入したときに、一脚の椅子の出来具合が良くなく、交換を申し入れたところこれまた直ぐに交換してくれたなどの経験もあります。

オーストラリア人の仕事や会社に対する考え方

多くのオーストラリア人は5時の退社時刻がくると、直ぐに退社して家路に付くか、帰りにスポーツクラブによって運動をしたり、パブで同僚や友人と軽くビール飲んで帰るのが普通です。日本でかつてあった様にだらだらと会社に残っている事はありません。その代わり会社にいる時間は効率良く仕事をして成績を上げようと努力しているように見えます。給料も契約形態によって異なりますが、その年の成績により翌年のベースに影響が出るので、仕事もやるときは一生懸命やる人が多いようです。日本より転職の頻度が高い為か、会社に対する忠誠心より自分がやっている仕事やスキルに対する忠誠心のほうが高いようです。ただ、小規模な会社は給与水準が良くないとか、勤務先のロケーションがよくないなどで、質の高い労働者を確保出来ない場合が多々有ります。事務処理などでも日本の事務職ならきめ細かく正確に処理できるような事でも時間がかかったり、間違いが多い場合もあります。

営業担当でも得意先とのお付き合いは日本ほど多くありません。昼のビジネスランチは良く有りますが、招待ディナーの場合は夫人も同伴での招待で無いと誘いにくいという空気があります。最近はインターネットが発達したこともあり、人により或いは貿易の仕事のように時差のある国の貿易相手先と交信する場合に家に帰ってからも仕事のメールを受発信する人たちも増えてきました。ただ、こちらの人が仕事より家庭を優先するのは変わっていません。日本では残業を断るのに「今日は家内の誕生日なので」という理由は通用しにくいのですが、こちらでは最大の理由になります。金曜日の別れの挨拶では必ず「良い週末を!」と言います。

 オーストラリアの人生の楽しみ方

この国はラッキーカントリーと言われるように人生を楽しむことを大切にしています。先月、30年前に初めてメルボルンに駐在した時のオーストラリア人の同僚から食事に呼ばれて、当時の同僚3人、その家族など久しぶりの再会を楽しみました。3人のうちの2人は女性でいずれも共稼ぎで、一緒に働いていた頃は独身でしたが、一人は今は50歳後半で既にリタイアしていました。3人の子供達も皆独立しており、メルボルンから80キロくらい離れたビーチ沿いの場所にセカンドハウスを購入し週末は殆どそこですごしてボートや釣りを楽しんでいる由。もう一人は50歳台前半ですが、メルボルンから150kmくらいの場所に最近セカンドハウスを購入してリタイアしたらそちらに引っ越す積りとの事でした。こちらでは55歳で日本の厚生年金にあたる企業と個人で均等に積み立てた基金が引き出し可能になるので55歳で退職してあとはリタイアライフを楽しむ人が多いようです。日本の賃金水準と比べてこちらの水準が特別高いわけではありませんが、共稼ぎが一般的であること、住居費を初めとする生活費が日本よりは幾分割安(最近はその差がほとんど無いように思われますが)であることなどから、生活を楽しむことがやりやすいようです。

考え方の異なるオーストラリアの会社と仕事をするのに日本のやり方や日本の標準をそのまま押し付けてはうまく行かない事が多くあります。貿易のお手伝いをする際には、異なるお互いの事情を十分理解していただくのが私の仕事のひとつになります。

 

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