混声合唱組曲
「富士山」

作詩 草野 心平  作曲 多田 武彦

T.作品第壹

麓には桃や桜や杏がさき
むらがる花花に蝶は舞ひ
億萬萬の蝶は舞ひ
七色の霞たなびく

   夢みるわたくしの
   富士の祭典

ぐるりいちめん花はさき
ぐるいいちめん蝶は舞ひ
昔からの楽器のすべては鳴り出すのだ
種蒔きのように鳥はあつまり
日本のすべての鳥はあつまり
楽器といっしょに歌っている

   夢みるわたくしの
   富士の祭典

七色の霞は雪に映え
七色の陽炎(かげろう)になってゆらゆらする
鹿や猪や熊や馬
人はゐないか人もゐるゐる
へうたんの酒や女の舞ひ
標野(しめぬ)の人も歌っている

   ああ
   夢みるわたくしの
   富士の祭典

遠く大雪嶺(だいせつれい)からは黄(くわぅ)鳥が
使者になって花を啣(くわ)へ渡ってくる
三つの海を渡ってくる

この曲は男声合唱組曲としてあまりにも有名ですが、混声合唱の
希望も多く、混声版として編曲されました。
男声合唱の水墨画から混声合唱の水彩画へ。