無伴奏男声合唱による日本名歌集

箱根八里

作詞 鳥居 忱(まこと)  作曲 瀧 廉太郎  編曲 信長 貴富


   第一章 昔の箱根
箱根の山は 天下の険(けん) 函谷関(かんこくかん)も物ならず
万丈の山 千仞(せんじん)の谷 前に聳え(そびえ)後(しりえ)に支(さそ)う
        雲は山をめぐり
        霧は谷をとざす
昼猶(なお)闇き(くらき)杉の並木 羊腸(ようちょう)の小径は苔滑らか
        一夫関(いっぷかん)に当るや万夫(ばんぷ)も開くなし
天下に旅する剛毅(ごうき)の武士(もののふ)
大刀(だいとう)腰に足駄(あしだ)がけ八里の岩ね踏み鳴す(ならす)
        斯く(かく)こそありしか往時の(おうじの)武士(もののふ)

   第二章 今の箱根
箱根の山は天下の阻(そ) 蜀(しょく)の桟道(さんどう)数ならず
万丈の山千仞の谷 前に聳え後に支う
        雲は山をめぐり
        霧は谷をとざす
昼猶闇き杉の並木 羊腸の小径は苔滑らか
        一夫関に当るや万夫も開くなし
山野(さんや)に狩する剛毅の壮士(ますらお)
猟銃肩に草鞋(わらじ)がけ 八里の岩ね踏み破る
斯くこそありけれ近時の壮士

ノスタルジア