混声合唱曲集
地平線のかなたへ
作詩 谷川 俊太郎  作曲 木下 牧子

春  に

 この気もちはなんだろう
 目に見えないエネルギーの流れが
 大地からあしのうらを伝わって
 ぼくの腹へ胸へそうしてのどへ
 声にならないさけびとなってこみあげる
 この気もちはなんだろう
 枝の先のふくらんだ新芽がこころをつつく
 よろこびだ しかしかなしみでもある
 いらだちだ しかもやすらぎがある
 あこがれだ そしていかりがかくれている
 心のダムにせきとめられ
 よどみ渦まきせめぎあい
 いまあふれようとする
 この気もちはなんだろう
 あの空のあの青に手をひたしたい
 まだあったことのないすべての人と
 会ってみたい話してみたい
 あしたとあさってが一度にくるといい
 ぼくはもどかしい
 地平線のかなたへと歩きつづけたい
 そのくせこの草の上でじっとしていたい
**大声でだれかを呼びたい
 そのくせひとりで黙っていたい**
 この気もちはなんだろう



   **〜**は作曲の際、省略されています