石垣りんの詩による五つの混声合唱曲
朝のパン

作詩 石垣 りん  作曲 萩 京子

2.冠

奥歯を一本抜いた
医者は抜いた歯の両隣り
つごう三本、金冠をかぶせた
するとそのあたり
物の味わいはばったり絶え
青菜をたべても枯葉になった
ああ骨はいきていなければならない
けだものの骨
鳥の骨
魚の骨
みんな地球に生えた白い歯
それら歯並びのすこやかな日
たがいに美しくふれあう日
金冠も王冠もいらなくて
世界がどんなにおいしくなるか。