混声合唱曲集
地平線のかなたへ
作詩 谷川 俊太郎  作曲 木下 牧子

卒業式

 ひろげたままじゃ持ちにくいから
 きみはそれをまるめてしまう
 まるめただけじゃつまらないから
 きみはそれをのぞいてみる
 小さな丸い穴のむこう
 笑っているいじめっ子
 知らんかおの女の子
 光っている先生のはげあたま
 まわっている春の太陽
 そしてそれらのもっとむこう
 きみは見る
 星雲のようにこんとんとして
 しかもまぶしいもの
 教科書には決してのっていず
 蛍の光で照らしても
 窓の雪ですかしてみても
 正体をあらわさない
 そのくせきみをどこまでも
 いざなうもの
 卒業証書の望遠鏡でのぞく
 きみの未来