混声合唱組曲
「海の童話」
作詩 中村 千栄子  作曲 中田 喜直

6.船 出

大漁旗に思い思いの化粧して
いま 港を出ていく 小さな漁船

わたしたちも乗りこみましょう
どんな世界が開けるか
自分で 確かめに行きましょう

翡翠(ひすい)色の海底(うなそこ)に
ひろがる 砂の波紋

一生目覚めることもない
真珠の眠る 白い貝

人魚姫でも 浮かび上がって来そうな
小さな泡が 一つ 二つ

一せいに飛び立ち 銀鱗を
太陽に自慢する いわしの群


朝早くから餌をねだる きす
なぜか赤くない 小鯛たち

わたしたちも 乗りこみましょう
どんな世界が開けるか
みんなで 確かめに行きましょう

虹の立つ昼
星が尾を引く夕
空と海とが 一つのものとなる嵐の夜

どこまで行っても 海はあり
どこまで追っても
太陽は逃げ
そして やっぱり 明日(あした)は来る