男声合唱組曲
「おかあさんのばか」 

雨のふる日
作曲 中田 喜直


雨の降る日
大きらい。
おかあさんが 入院してたとき
雨の日に
ようだいが へんになった。
その時
おとうさんは
こどもみたいに
声を出して 泣いたって
水天宮さまの
ばちがあたったんじゃないかと
おとうさんは いってたそうだ。

雨のふる日に
学校から帰ってくると
シーンとしていて
こわいみたい。
おとうさんが また
思い出して泣いているんじゃ
ないかと
思うと よけいかなしくなる。

≪お父さんの語り≫
 子どもでなくても雨のふる日はいや
なものだ。うちでは、洋が生まれる時も、
幸が生まれる時も雨がふっていた。妻が
倒れたのも、水。妻と私が見合いした
所は海。結婚式には雪がふった。
 迷信めいたことになるが、なんだか
雨の日がおそろしくなる。子どもたち
も雨の日は、だまりこくって妻の霊に
あかりをつけたりする。雨の日また楽
しからずやなどいう雰囲気は、当分生
まれそうにもない。

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