桜井昌司獄中詞歌集


布川事件支援のCDが、2000年5月30日についに完成しました。お馴染みの佐藤光政さん『壁のうた』コンサートのダイジェスト版(約30分)で、とても感動的なCDです。ジャケットは、絵手紙作家の田口孝夫さんにお願いしました。

 また、このCD発売(頒価:2,000円) を記念して、2000年9月12日(火)東京・四谷区民ホール佐藤光政コンサート・壁のうたが開かれました。

CDジャケット


今あなたに

悲しいときにも うれしいときにも
私にはいつも あなたがいた
人間って いいですね
人間って いいですね
あなたがくれた 夢・希望 そして 愛
夢・希望 そして 愛
今日は あなたに
今 あなたに
知っている人にも 知らない人にも
教えてあげたい 教えられたい
人間って いいですね
人間って いいですね
生きている証 夢・希望 そして 愛
夢・希望 そして 愛
今日は あなたに
今 あなたに
はるかな過去にも はるかな未来にも
歴史をつなぐ 命がある
人間って いいですね
人間って いいですね
時代をひらく 夢・希望 そして 愛
夢・希望 そして 愛
今日は あなたに
今 あなたに

ふるさとの風

ふるさとの風は
いつの日にも安らぎがある
桜咲く丘の上に 学び舎に
在りし日々
緑なすふるさとに
我が命もえし日々
春の風やわらかに 今日も流れる  
春の風やわらかに 今日も流れる  
ふるさとの風は   
いつの日にも安らぎがある
ふるさとの風は
母さんの匂いがする
グラジオラス咲く庭を
赤いカンナ咲く道を
母さんが生きていた 歩いていた
あの日々を
春の風やわらかに 今日も流れる
春の風やわらかに 今日も流れる
ふるさとの風は   
母さんの匂いがする

ゆらゆら春

雨が降って 風が吹いて 季節は流れゆく
雲の上の空の上の どこか どこか どこか
春待つ人も野山も 明日を信じてる
そうさ みんな そうさ みんな耐えているのさ
ゆらゆら春は来るね ゆらゆら春は来るね
喜びと悲しみに 季節は流れゆく
空の下の人の上の どこか どこか どこか   
春待つ人のもとに 花咲く時はいつ  
きっと いつか そうさ いつか 夢の朝が   
ゆらゆら春は来るね ゆらゆら春は来るね
別れたり 出会ったり  季節は流れゆく
人の中の街の中の どこか どこか どこか
春待つ人は笑って 笑っているものさ
君も ほうら そうさ 友がいるじゃないか
ゆらゆら春は来るね ゆらゆら春は来るね
春待つ人は笑って 笑っているものさ
君も ほうら そうさ 友がいるじゃないか
ゆらゆら春は来るね ゆらゆら春は来るね
ゆらゆら春は来るね ゆらゆら春は来るね

金 木 犀

朝もやの中に 金木犀咲けば
十四才のかわいい君がいる
十条台から飛鳥山に歩いた あの裏道 あの朝
まだお下げ髪にリボンの似合った
君と初めて手をつないだ あの時も
おさない恋を見つめるように 香っていた 思い出の花   
香れ 香れ 金木犀 清らかにさわやかに
香れ 香れ 金木犀 清らかに思い出に
夕もやの中に 金木犀咲けば
十七才の君が微笑む
十条銀座のきりんへ通った頃 あの季節 あの頃
まだ口紅をつける前の
君と初めて口づけした あの日にも
いちずな恋を見守るように 香っていた 思い出の花   
香れ 香れ 金木犀 甘やかにつややかに
香れ 香れ 金木犀 甘やかに思い出に
宵闇の中に 金木犀咲けば
二十才になったきれいな君がいる
十条駅を降りて歩き回った頃 あの路地裏 あの夜
まだ忘れない十月十日に
君と別れたあの言葉を あの涙を
せつない別れを見守るように 香っていた 思い出の花   
香れ 香れ 金木犀 あざやかにひそやかに  
香れ 香れ 金木犀 あざやかに思い出に

母ちゃん

母ちゃん あの日 また来るよと 残していった言葉は
昨日のことのように憶えているよ
僕が手錠をされてから いろんな事があったろに
悲しみの晴れる日を待ったろうに
うつむいた背中に 苦しみを背負ったままで
うつむいた背中に 悲しみをこらえたままで
待ちわびて 待ちわびて 逝ってしまった
母ちゃん つぶやけば 夕日の中を歩く姿が見える
母ちゃん 母ちゃん 母ちゃん 母ちゃん   
も一度 その手に触れたかったよ
母ちゃん あれは 初めての面会だった ぽろぽろと
涙こぼすだけだった 泣き笑いしたね
きっと僕の幼い日を 思い出して見つめた
汚れている僕のことを 責めもせずに
信じていると言ってた ほほえんだ瞳が言ってた
信じていると言ってた うるんだ瞳が言ってた
それなのに 待ちきれずに 逝ってしまった
母ちゃん つぶやけば 風の中に優しい声が聞こえる
母ちゃん 母ちゃん 母ちゃん 母ちゃん
も一度 昌司と呼んでほしい

声が聞こえる ( 父ちゃん )

あれが人殺しの親だと さされる指に顔を伏せて
駅のホームを 通勤電車を逃げて歩いたと
怒りを捨てるように父は話した
いつか 父の手を握って 苦しい思いみんな聞いて
僕が幸せを作って見せると 胸に秘めていたのに
待って 待ちわびて 二十五年の春に
「父死す」 の電報が 無造作に届いて
時が止まって
うつろに夢が 夢が消えてゆく
おまえが帰るその日までは 生きてるきっと待ってると
おまえのために ボロ家だけど守っているからと
いつも会う度に 言っていたのに
その日は父を背負って歩いて 一緒に酒も飲んで
オヤジごめんよ許して下さい 謝りたかったのに
待って 待ちわびて 二十五年の春に
昨日「父死んだ」 と 電報の文字は
胸に刺さって
いつしか あの日の父の声になる
あの日逃げて歩いた駅に立って
「どうか どうか無実の息子を助けて下さい
お願いします お願いします お願いします」
父の祈りの声が 声が聞こえる
声が聞こえる 声が聞こえる 声が聞こえる

あなたの花

白い花はあなたの花ですか
昨日庭で見つけました
草のはざまで咲いていました
名前を知らない小さな花は
真実に生きている
あなたのように あなたのように
清らかでした
白い花は 白い花は あなたの花ですか
赤い花はあなたの花ですか
今日も花壇を飾っています
風と遊んで揺れています
時を忘れぬ季節の花は
誠実に生きている
あなたのように あなたのように
あたたかですね
赤い花は 赤い花は あなたの花ですか
つぼみの花はあなたの花ですか
きっと明日は咲くでしょう
私の庭を照らすでしょう
夢ひそやかに 明日待つ花は
あふれる愛の人
あなたのように あなたのように
輝いています
つぼみの花は つぼみの花は あなたの花ですか

春風の乙女

空のように大らかに いつの日も 清らかに
あなたが見る明日の夢
きっとかなう日は来るよ
胸を張って歩いている君の
背中に揺れる髪
君は 夢を 夢を抱き 今 春風の乙女
雲のように柔らかに いつの日も 優しく
あなたが知る苦しみを
案じている人がいるよ
友と語りあっている君の
瞳は輝いて
君は 明日を 明日を信じ 今 春風の乙女
風のようにさわやかに いつの日も 健やかに
あなたがいる幸せを
感じている人がいるよ
今日も笑顔を見せている君の
命は永遠にあれ
君は 愛を 愛を信じ 今 春風の乙女

逢いたいよ

悲しみに出会うたび 思い出すあなた
信じあう喜びを 教えたあなた
涙の数だけ 人を信じて
切れたキャンバス繕って 明日を描けば
 逢いたいよ 逢いたいよ
  今日も あなたに
喜びを感じては 思い出すあなた
愛し合う幸せを 教えたあなた
月日の数ほど 人と出会って
汲めど尽きぬ人の世の 夢をつかめば
 逢いたいよ 逢いたいよ
  今日も あなたに
幸せを知るたびに 思い出すあなた
生きている尊さを 教えたあなた
季節の花に 風の香りに
一度だけの人生を 満たすものを得て
 逢いたいよ 逢いたいよ
  今日も あなたに

帰ろ かえろ

1 帰ろ かえろ 夕日が沈む
  子供が帰るよ
  あばよさよなら また明日
  帰ろ かえろ 一番星だ
  誰かが呼んでる
  早く はやく帰ってこー
  帰る人の いない家は
  誰もいない 声もない
  庭で 枯れた カンナの花が
  風に吹かれて 人恋し
  人恋しと 鳴っている
  帰ろ かえろ 古里へ帰ろ
  帰ろ かえろ 明日は帰ろ
2 帰ろ かえろ 夕焼け小焼け
  カラスも帰るよ
  明日 天気に しておくれ
  帰ろ かえろ お月さま出たぞ
  みんなを呼んでる
  もうすぐ 夜になるぞー
  帰る人の いない家は
  灯りもつかない 音もない
  熟れたままの 柿の実が
  真っ赤に染まって 人恋し
  人恋しと 燃えている
  帰ろ かえろ 古里へ帰ろ
  帰ろ かえろ 明日は帰ろ
3 帰ろ かえろ 星空夜空
  大人もも帰るよ
  夜が 夜が来たぞ
  帰ろ かえろ みんな帰ろ
  灯りが呼んでる
  早く はやく帰ってこー
  帰る人の いない家は
  闇にとけて 夢もない
  屋根に落ちて 椎の実だけが
  ころころ遊んで 人恋し
  人恋しと 呼んでいる
  帰ろ かえろ 古里へ帰ろ
  帰ろ かえろ 明日は帰ろ

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