まぁ、暑かったしね。

 アルファロメオ145の買い換えの話は、実は昨年(1999年)中からあった。
 具体的にはトヨタのMR-Sが出た辺りからだ。145の車検を翌月に控え、アレもやらないといけない、コレも治しておかないと、なんて考えていた辺りの頃だ。

 買い換えの背景として、度重なる145の不調と修理の煩わしさが上げられるだろうか。
 度重なるとは言え年に2回程度ではあったのだが、その度に100km離れたディーラーまで持って行く負荷は想像以上に大きなモノで、都内を横断する度に巻き込まれる渋滞は、精神的にかなりクルものがあった。


 と言うわけで、1999年秋。国産に今一度立ち返るという条件付きで次期FSXの選定が始まった。
 145は恐らく日本車では感じることの出来ない気持ちよさ、楽しさを運転者に与えてくれる乗り物である。
 それは、速さでも乗り心地でもない何かではあるのだが、感覚に訴えて来るモノなので、なんとも書きようがない。
 それに慣れきってしまってるワタクシにとっては、普通のクルマではすでに物足りなくなってしまっているという、ある意味中毒症状にも似た状態になっていた。
 「もう普通の生活には戻れないのネ・・・」戻る気もないけど・・・。

 選定作業は困難を究めた。
 3年という年月は、こうもヒトを変えてしまうのかと、この時初めて知ることとなった。
 まず基本的にアタマの中が外車モードになってしまっているので、「ぷじょー」とか「るのー」とか「ふぉるくす(以下略)」とか欧州の単語が次々に駆けめぐる。
 選んでもいいんですが・・・結局今とどう状況が変わると言うのだろうか。→いや変わらない。
 シヤワセ度はちょっとアップするかもしれないけど。
 カタログ代わりのカー雑誌を読んでいるとますますその傾向が強くなっていくので、実際国産車ディーラーに足を運んで見ることに決めた。
 それが車検1月ほど前のコトだった。

 最初はWebで各社のラインナップをそれぞれ確認するという、インターネット時代のお約束な作業から開始した。
 トヨタ、ニッサン、マツダ、ミツビシ、スバル、ホンダ・・・と巡回し、ニッサン、ミツビシ、スバルが消えた。これは単に気に入った車種がなかっただけである。
 トヨタにおいてはMR-S、マツダはロードスター、ホンダはシビックTypeR、と候補に上げ、実際にディーラーで実車を見て、営業から話を聞くことにした。
 ちなみにその後、シビックは消えることになった。これもあくまで個人的な好き嫌いの問題である。
 シビックが消えたところで、残った候補車は今の145に比べて実用性が格段に落ちることになるのだが、気が付かないフリをする事に決め込んだ。

 最初に訪れたのはトヨタビスタ。本屋に行く途中でMR-Sが展示されていたのを見つけたからだ。
 早速飛び込んで、じっくり見させて貰った。
 見ようによってはかなり異様なスタイルだが、全体的にまとまっているので、違和感がない。個人的にはセリカよりはデザインが破綻していないと思う。
 さすがに発表になったばかりなので試乗車はおいていないと言われ、じゃあと言うことで気が済むまでいじり倒させてもらった。
 微妙な笑顔を浮かべる営業の方からカタログと価格表とオプションカタログを貰って、失礼した。

 次に行ったのがマツダ(アンフィニ)である。
 次とは言え、この時すでに車検は終えてしまっていたのだが。
 近所のアンフィニを何度かクルマで通過中にちらりとなかを覗いた(渋滞中だったので)ことがあるのだが、一向にロードスターが居る気配が無かったので、ちょっと足を伸ばしたところにあるディーラーに向かった。
 駐車場に止めると営業の方が走って出迎えてくれたが、ロードスターを見たい旨伝えると、ちょっと渋い顔をして
 「すいません、うちは置いてないんです。あちら(近所のディーラー)だったら置いていると思うのですが・・・」
 ぬぅ、来るときも無かったのだが。まぁいい、奥に置いてあるのだろう。
 営業の方にお礼を言って、引き返した。
 近所のアンフィニにつくとまた営業の方が走ってきた。
 ロードスターが見たいと告げると、やっぱり渋い笑顔で「今はない」と言われる。
 でも、ちょっと色々話しも聞いてみたかったので、店内に案内されて、ダベリモードに突入する
 お互いに適当にくっちゃべってると、どうやら試乗車に心当たりがあるので連絡してみると言う。
 よろしくお願いして、一旦帰宅した。ら、留守電が入っていて、聞いている内に再度電話があった。どうも試乗車のあるディーラーに連絡がついたとのこと。
 電話内容がちょっと要領を得なかったので、こちらから出向くと、どうも迎えに来てくれていたらしい。
 ディーラーで待っていると程なく帰ってきたので、どこまで行くんですか? と聞いたら
 「土浦です」
 自信たっぷりの返事が返ってきた。
 週末お約束の大渋滞に捕まりながら、なんとか土浦のほうのディーラーに到着し、早速試乗してみた。
 試乗車はどうやら中古車流れのモノだったらしく、トランクに値札が入ってた。
 クルマのタイプは1800ccRS。オーディオ・集中ドアロック付、ABS無しである。
 フロントバンパーにオプションのフォグが装着されていた。
 渋滞の中試乗。その後、ディーラーに戻って、帰宅した。
 はっきり言って、この段階では「屋根が無いって気持ちいいなー」ってくらいしか思わなかった。
 (重要。オープン唯一の取り柄)

 その後しばらく忙しくて、マツダのディーラーには行かなかった。その間は145を手放す手放さないでかなり迷った。

 その間にMR-Sの試乗もしてみている。
 乗った感じ、なかなかボディも軽いし、エンジンも元気いいし、ハンドリングも悪くない。
 擬音を多用すると、「スパッ」と切ると「ギュッ」と曲がる感じ。しっかり路面に踏ん張っているので、
 「これなら誰でも速いコーナリングが出来るんじゃない?」
 と思わず松岡修造(偽)になってみたりもした。
 MGFをもっとソリッドにしたような乗り味っぽい感じだろうか。かなりあいまい表現だけど。
 今のクルマに比べて結構目線が低いので、ちょっと怖い感じもあったが、すぐに慣れた。
 助手席に座る営業の方がなんだか微妙な笑顔を浮かべていたので、それ以上の元気な運転はちょっと控えざるを得なかったが。
 でも感想としては、ちょっと感性にあわなかった。それから造りの粗さがちょっと目立った。なんというか、オモチャチッキーな感がどうしても否めない。
 それと、2ndカーとして持つなら面白いけど1stカーとして持つのはどうだろうか。とか色々考えると、結局候補から外れることとなった。

 2月に入り、例のイベントも終了し、ちょっとだけ精神的にヒマになったので、再びアンフィニを訪れた。
 今回は最初から具体的な話まで進めるつもりで行ったので、ちょっとだけ気構えが前とは違っていた。
 駐車場にクルマを停めると、また営業の方が飛び出してきた。
 以前の方をお願いすると、退社してしまったとのこと。
 一から交渉し直しか? と思ったら、以前延々ディーラーでだべってた上、試乗しに土浦まで連れて行かれた特殊なヒトってことで、顔を覚えられていたらしい。
 すでにネゴシエーションは始まっていたのだ。
 たまたま試乗展示車が来ているとのことで、さっそく試乗させて貰った。
 乗ったのは1800ccVS。内装がタンでオーディオシステムが標準で組み込まれているタイプである。
 でもエンジンは一緒で脚周りが少し違う程度なので、参考程度にはなるでしょうと、助手席でシートベルトを締めながら、その営業の方は言った。
 試乗コースは元気に走れる道だったので、腕白坊主ぶりを発揮した。
 営業の方は、ひきつった笑いを浮かべていたけど。
 あのコーナーで対向車がいなかったら、きっとガキ大将っぷりを発揮したに違いない。

 ディーラーに戻って、まずは見積もりを造ってもらった。
 結局いくらになるか判らなければ、判断しようがないからだ。税金やらなにやらで結構かさむので、一度はっきりとした金額を見てみたかった。
 交渉が本格的にスタートした。
 この時の自分のスタンスは、
 1):理想的な条件が提示されたら、決める。
 2):結局交渉決裂してしまったら、145をあと2年乗る。

 結果、理想条件が出てしまいました。
 金額に関しては書かないけど、145の下取り価格も4年目の割にはそこそこ高額だったし、値引きも想像通りの値まで達した。
 もっと行くかなぁとも思ったが、ちょっと限界だった。
 仮契約を結び、その日は帰宅。

 今回の選定車種は、1800ccRSというタイプで、同じ1800ccのグループの中で最もホットなモデルとされている。
 他にS、VSとあるが、それらとの相違点は、ビルシュタインダンパーの装着、ホイールの15インチ化、フロントタワーバーの装着などである。あと忘れた。
 3車種ともトルセンLSDと6速マニュアルトランスミッションは標準で装着されている。
 オプションだが、ABSを装着した以外はメーカーオプションは付けなかった。
 ディーラーオプションでマッドガードとか付けたけど。
 オーディオはオートドアロックと抱き合わせメーカーオプションだったのと、操作部が気に入らないので装着しなかった。
 またMDプレイヤーの設定が無かったのも、付けなかった理由の一つである。
 まーオートドアロックも、普段1人乗りだから別にいらんわ、っちゅー選択です。
 もー最初に買ったセントバーナード号から比べれば、格段に不便になってきてます。
 でもクルマの装備なんて必要最小限でいいやん。余計な装備は壊れる元増やすだけだし。
 えーと、で、カラーは「クラシックレッド」を選択。
 早速裾野の某たいしょ@R34GT-Rオーナーから「バケットシートと4点ベルトとロールバーは即付けでしょ」とか言われるけど、しばらくは大人しく乗る予定。


 次の日。役所で住民票と印鑑登録証をとり、翌日には頭金の準備も終了した。
 そして土曜日、正式な契約とあいなった。
 ディーラーの受け付けに「ご成約のお客様」というボードがあるのだが、しっかり名前がぶら下がっていた。
 しかも10数人分がぶら下がっているにもかかわらず、ロードスターはワタクシ1人という、寂しい現実がそこにあった。
 売れてないの?
 ちょっとこっぱずかしい気持ちを抑えながら書類書きも滞り無く済み、印鑑ペチペチ押して、よろしくお願いしますとディーラーを出た。
 同時に145もここでお別れとなり、3年間余りのアルファロメオとの生活は幕を閉じた。
 色々な感情が無くもなかったが、1週間も前に決めていたコトである。ここは気持ちよく次ぎも良いオーナーに恵まれることを祈りつつ、営業の方に鍵一式を渡した。
 帰りは見物に来た大田区の某ハタ155氏に乗っけてもらって帰った。
 「またカーセンサーで会おう」145に残した最後の言葉がコレだった。
 自分結構ドライかも。まぁ冬だしね。静電気も溜まろーってもんだ。


 それから2週間後。いよいよ納車となった。




     #Capter 1へ続く。

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