BRIAN WILSON / SAME

(1988)

 アメリカを代表するバンド、ビーチ・ボーイズの屋台骨であるウィルソン三兄弟の長兄にして、偉大なるポップの巨匠ブライアン・ウィルソンのあまりにも遅過ぎた初のソロアルバムです。
 世紀の名盤『PET SOUNDS』が商業的に惨敗したあたりから精神的に落ち込んでしまい、続く『SMILE』が未完に終わった後はライヴにも出演できず、実質的には脱退したも同然でした。それどころか社会生活自体まともに営めていない状態のときもあったようです。
 だからこのアルバムが出たときは、ブライアンの新曲が聴けるというだけで満足という気持ちでしたが、聴いてビックリ、『PET SOUNDS』にも匹敵する内容でした。特に1曲目の「LOVE AND MERCY」や3曲目「MELT AWAY」など、過去のビーチ・ボーイズのどの名曲と比べても遜色ない傑作です。
 ただ、精神的リハビリといった趣の復帰作のためかひたすら明るい印象で、かつての悩める大国アメリカを象徴するような倦怠感、疲弊感がみじんも感じられない点が唯一の不満です。
 それにしてもブライアンが脱退した後,、本家ビーチ・ボーイズを支えた二人の弟デニスとカールはもう既に他界してしまったのに、真っ先にリタイアした感のある彼が生き長らえてこんな傑作を出すとは…皮肉です。

2002/06/17


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