THE ARTIST FORMERLY KNOWN AS PRINCE
/ EMANCIPATION

(1996)

 かつてプリンスと呼ばれ、今またプリンスと呼ばれている(笑)このアーティストがワーナーとの確執の末にEMIに移籍して発表したこの作品は、なんと3枚組というヴォリュームたっぷりの傑作です。
 この人の音楽について語る前に、あまりにナルシスティックなキャラに引いてしまう人もいるほどですが、それは正しい反応だと思います。彼の魅力はそのキワモノっぽさにあり、80年代にあれだけのセールスを上げ、超メジャーな存在となったことの方がむしろ奇妙な現象だったのではないでしょうか。つまり本質的にカルトヒーローである彼の音楽は、その特異なキャラ同様受け手を選ぶのです。当の本人も、自分は人とは違うんだという鼻持ちならない選民意識の固まりですが、一般に受け入れられないと失望するというだだっ子ぶりは、ほほえましいものがあります。
 さて、このアルバムの内容ですが、1曲目の「JAM OF THE YEAR」からグシャッというありえない音色のビートによって一気に彼の世界に突入し、様々なタイプの音楽が次から次へと繰り出されます。そしてもちろんそのどれもがすばらしいデキです。例えば彼にしては珍しいカヴァー曲「BETCHA BY GOLLY WOW !」の堂々たる風格には、天才が本気を出すと怖いと痛感させらます。
 余談ですが、3枚とも収録時間がきっちり60分になっているという無意味なこだわりもステキです。(笑)

2002/10/13


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