PETER GABRIEL / SAME (I)

(1977)

 ピーター・ゲイブリエルは、ジェネシスの初代ヴォーカリストとしてシアトリカルなパフォーマンスを行っていた頃からカリスマ性の塊でした。そのカリスマが苦悩の末に一身上の都合でジェネシスを脱退、しばしの沈黙後満を持してソロ活動を開始しました。その絶対的な存在感を象徴するかのように自分の名前をアルバムタイトルに冠した1stアルバムです。ヒプノシスによるこのジャケットデザインから『CAR』と呼ばれることもあるようです。
 ここでのピーターはジェネシスとは違った方向性を必死で模索しているかのようです。とりあえずジェネシス時代からの奇っ怪なヴォーカルスタイルを生かした「MORIBUND THE BURGERMEISTER」で始まりながら、シングルヒットした「SOLSBURY HILL」のような純粋にメロディの良いポップソングやイントロのソリッドなギターが今までにない勢いを感じさせる「MODERN LOVE」、冒頭のアカペラコーラスがユーモラスな「EXCUSE ME」と、前半から実に様々なタイプの楽曲が並び、ピーターの新たな魅力が感じられます。
 で、問題はB面。随所に施された大仰なストリングスが浮いているように感じられ、アルバム全体のバランスを崩しています。「DOWN THE DOLCE VITA」なんてかなりかっこイイ曲なんですが大げさなアレンジにしちゃったのがマイナス。さらにもったいないのがラストを飾る名曲「洪水」。あの曲の崇高さは、壮大に盛り上げるよりむしろ訥々とシンプルにやった方が引き立つと思うんですが…。戦犯はプロデューサーのボブ・エズリン。
 …と言うことで、まだ方向性の定まらない感じのソロ活動スタートとなりましたが、この反動からか2nd以降は研ぎ澄まされたサウンドで独自のスタイルを確立していきます。

2005/01/01


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