KERRY LIVGREN / SEEDS OF CHANGE

(1980)

 イエスなどに匹敵する音楽性を持ち、商業的にも成功したアメリカンプログレバンドの希有な存在カンサス。そのリーダー格、ケリー・リヴグレンのソロアルバム『闇の支配者』です。前後して出たスティーヴ・ウォルシュのソロ作が、本家とは趣を異にしたシンプルかつ軽快なサウンドだったのに対して、こちらはカンサスの持つドラマティックな面をより強調したサウンドとなっています。
 本家と違う点は曲ごとに変わるゲストヴォーカル。有名なところではレインボーを脱退し、ブラック・サバス加入直前だったロニー・ジェイムス・ディオ。彼の雄々しい歌いっぷりはあまりにも濃過ぎて個人的にはややキツいものが…。(苦笑)逆に唯一ケリー自身が拙いヴォーカルを披露した「WHISKEY SEED」は、ミシシッピーデルタブルースを思わせる出だしからいつのまにか得意のリフに持っていく強引な展開で、意外な収穫。また、同僚のスティーヴ・ウォルシュが歌った「HOW CAN YOU LIVE」では、カンサスの次作『AUDIO VISIONS』のポップ化を予告するようなサウンドを聴くことができます。全体を通して、カンサスのようなカンサスでないような微妙な魅力に溢れたアルバムと言えるでしょう。
 ただ、このように何年も続いたバンドのメンバーが、充電期間のつもりでソロを出すようになるのは、得てしてお家騒動の前兆だったりするものです。カンサスもまさにそれ。この後スティーヴが抜け、ロビーが抜け、やがてケリーまで抜けてしまうのでした。
 

2004/04/02


BACK