T.REX / THE SLIDER

(1972)

 グラムロックの大スター、マーク・ボランの人気が頂点に達した、T.レックスとしては3枚目のアルバムです。
 ティラノザウルス・レックス時代からのアコースティックな路線を変更、前作でエレクトリックな手法を確立しヒットさせましたが、このアルバムでもその勢いは止まるところを知りません。大ヒットしたシングル「METAL GURU」、「TELEGRAM SAM」をはじめ、全編に渡ってボランブギーが炸裂しています。
 その魅力はいろいろありますが、まずボランの独特の声質によるアンニュイな歌いっぷりと、どこかもたついたリズムが醸し出す妙なグルーヴ感。そしてそれにプロデューサーのトニー・ヴィスコンティが上辺だけ豪華なストリングスやコーラスなどの装飾を施すもんだから、もう大変。やたら華やかかつ賑やかなのにはかなさ抜群です。彼の場合、セールス的な絶頂期だけでなく彼自身の人生も短命だったという先入観があるので、感慨もひとしお。さらに言うと、リンゴ・スターが撮ったジャケ写真も、ピンボケで粒子が粗い上に露出もオーヴァーなのが、はかなさを助長してハマり過ぎです。そしてなんと言ってもスゴいのは、それらがすべて結果オーライであるということ。同時代のグラム系のスターでライヴァルだったデイヴィッド・ボウイが、非常に戦略的な方法論を持つクレヴァーなアーティストだったのに対し、ボランってホントに天然キャラだなぁと、しみじみ思います。

2004/06/01


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