SYD BARRETT / THE MADCAP LAUGHS

(1970)

 初期ピンク・フロイドの中心人物、「狂ったダイヤモンド」ことシド・バレットがバンド脱退後に発表したソロ第1作『帽子が笑う…不気味に』は、聴けるだけでもありがたい名盤です。
 名盤と言っても、完成度がどうだとか、サウンド的にどうだといった次元で語ることはまったく無意味です。何しろ彼は無垢であるが故にドラッグに溺れ、精神に異常を来たしてしまった末にバンドを追われた状態だったわけですから、アルバム1枚どころか、1曲1曲をまとめるだけでも大変なことだったと思います。もっとも、大変だったのは周囲の人たちでしょう。何とかこの狂気の天才の作品を世に出そうと、フロイドのメンバーであり友人のデイヴ・ギルモアとロジャー・ウォーターズも約半数の曲でサポートしています。
 そういった中で当の本人は壊れかけた想像力の赴くまま、実に奔放に彼独自の屈折したメロディーを奏でています。だからこそ、ほとんど弾き語りのような曲も含めてすべてが美しく響くのです。真のサイケデリックスターにアレンジなど関係なし。
 

2002/10/01


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